「スポーツに賭けるって、海外の話じゃないの?」
そう思っていたあなた。実は今、日本は世界有数の「スポーツベッティング大国」と言っても過言ではありません。
しかもその多くが、違法な海外サイトを通じて行われているという事実をご存じでしょうか?
この記事では、日本で今静かに広がるスポーツベッティングの実態と、そこに潜むリスクや課題を、やさしく解説します。
■知らない間に…日本人が6兆円を海外に賭けていた?
最近、サッカーや野球の試合を観ていて、「誰が得点するか予想しよう!」なんて話題になったことはありませんか?
実はこうした試合にお金をかける「スポーツベッティング(スポーツ賭博)」が、今、日本国内でも爆発的に広がっているのです。
民間の調査によると、2024年、日本に住む人が海外のサイトを通じて賭けた金額は、なんと約6兆4500億円。
競馬を除く公営競技と合わせると、世界4位の規模になります。
しかもこれらの賭けの多くは、日本では法律で禁止されている「違法な賭博」です。
■どうやって賭けているの?
多くの人は、スマホやパソコンからアクセスできる海外のサイトを使っています。
例えばキプロスなどの国に拠点を持つ事業者のサイトでは、プロ野球やJリーグ、大相撲など、日本の試合が約250種類も賭けの対象になっています。
決済方法も銀行送金や仮想通貨(暗号資産)などが用意されており、見た目は「ゲーム感覚」ですが、立派な違法行為です。
実際、こうした行為は**刑法上の「賭博罪」**に該当しますが、「違法だと知らずにやっている人」も多いのが実情です。
「ただ乗り問題」とは?
さらに問題視されているのが、「フリーライド(ただ乗り)市場」の存在です。
どういうことかというと、日本国内のプロスポーツの試合が、海外のサイトで勝手に賭けの対象にされているというのです。
チーム名やロゴ、選手の顔、映像までも無断で使用され、収益はすべて海外に流出。
国内のスポーツ界にはほとんど還元されていません。
2024年には、このフリーライドによる賭け金が約4兆9000億円に達したといわれています。
まさに「見えない大金」が海外へと流れ出ているのです。
見逃せないリスク:八百長と依存症
違法なスポーツ賭博には、当然ながら大きなリスクがあります。
八百長の温床に
2018年、ある日本のプロスポーツの試合で、不自然な賭け金の動きがあり、海外当局が「八百長の疑いあり」と判断。その賭けは無効となりましたが、日本側には情報が共有されませんでした。
さらに2025年5月には、オーストラリアでプレーしていた日本人サッカー選手が、わざとイエローカードをもらった疑いで逮捕。もしこれが日本国内だったら、誰も気づかなかったかもしれません。
依存症のリスクも拡大
欧米ではスポーツ賭博が合法化されたことで、ギャンブル依存症が3割も増加したというデータもあります。
SNS上で選手への誹謗中傷や脅迫が深刻化したケースもあり、放置できない問題です。
世界はどう対応しているの?
ヨーロッパやアメリカでは、賭博を合法化し、管理下で運営する方向に進んでいます。
例えば、試合の賭け金の動きに異常があれば、データ会社とスポーツ団体が連携して即座に調査。
また、利用者が賭けすぎているとシステムが自動で警告したり、サービスを一時停止する仕組みも導入されています。
中でも注目されているのが「マコリン条約」。
これはスポーツにおける八百長などを防ぐために作られた国際的な枠組みで、2025年7月時点で43カ国が署名し、15カ国が批准しています。
残念ながら、日本はまだ未加盟です。
totoではダメなの?
日本にも一応、「toto(スポーツ振興くじ)」という合法的なベッティングがあります。
ですが、その売上は約1300億円と、違法市場の6兆円に比べるとケタ違いです。
なぜか?理由のひとつが**還元率(払い戻し率)**です。
- toto:50%
- 欧米のサイト:90〜99%
つまり、totoで1万円賭けても5000円しか戻らないのに、海外サイトでは9000円以上戻ることもあるわけです。
これでは「合法だからやろう」と思えません。
どうすべきか、いま議論のとき
- 違法サイトを取り締まるか
- 賭博を合法化してしっかり管理するか
- それとも、現状のまま放置するか
今、日本はこの重要な分岐点に立っています。
稲垣弘則弁護士(スポーツエコシステム推進協議会 代表理事)は、「日本もマコリン条約に署名し、官民で監視体制を整えるべきだ」と訴えます。
そして、今後の社会全体の課題として、「ギャンブル依存症や選手の保護」などにも目を向けなければなりません。
まとめ:スポーツ賭博とどう向き合うかは、私たち次第
- 日本のスポーツ賭博市場は世界4位、違法で6兆円超
- 八百長や依存症など深刻なリスクも
- 世界では合法化+管理の流れが主流
- 日本も今こそ議論が必要な時期に来ている
私たちは「知らなかった」では済まされない時代にいます。
スポーツを楽しむすべての人が、安全に、そして公正にその魅力を味わえる社会をつくるために。
あなた自身が「どう向き合うか」を、今こそ考えるタイミングなのかもしれません。