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なぜ日本に24%の関税?――トランプ流“アメリカ第一”の本音と計算ミス

あなたは「アメリカが日本の車に24%の関税をかける」と聞いて、どう思いますか?
「え、それって正当なの?」「そんなに高くして意味あるの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。

実は、この24%という数字には、多くの専門家が首をかしげるような「謎の計算ロジック」が潜んでいます。そしてそれは、ただの外交交渉の材料ではなく、世界の貿易バランスそのものを揺るがす大問題へと発展しかねないのです。

トランプ前大統領、再び“関税カード”を切る

2025年に入り、トランプ前大統領は再び関税政策を強く押し出してきました。

対象は中国、メキシコ、カナダと続き、ついに日本も「24%の関税対象国」としてリストに載りました。

理由は、「アメリカが一方的に損をしている」「貿易赤字を解消したい」「国内の雇用を守りたい」などが挙げられています。

この関税政策、通称“トランプ・タリフ”は、見方によっては非常にわかりやすいロジックです。

海外からの輸入品に関税をかけて高くすれば、アメリカ国内で作った製品が相対的に安く感じられ、売れる。するとアメリカ国内の生産が増えて、雇用も増える――。

一見、良さそうに思えますよね?

でも、それって本当に正しい?

多くの経済学者たちは「NO」と言います。

なぜなら、関税を上げれば当然その分だけモノの値段も上がり、消費者の生活を直撃するからです。

しかも、相手国からの報復関税が飛んでくることも確実。

そうなれば輸出業も打撃を受け、結局は「国内経済全体が損をする」可能性が高いのです。

実際、中国はすぐさまアメリカに対して同じく84%の関税を課し、日本も14%の追加関税を課されたことで、合計24%という“重税”を負うことに。

経済への影響は確実に出始めています。

24%のナゾの計算式

そもそも、この24%という関税率。どうやって計算されたか、ご存じでしょうか?

最初、米国政府は「日本がアメリカに不当に関税や障壁をかけているから、その半分だけお返しする」と説明しました。けれど、その根拠はまったく明らかにされませんでした。

その後、アメリカの新聞『ニューヨーク・タイムズ』が驚くべき事実を報じました。

それによると、計算方法はなんと「アメリカが日本とどれだけ貿易赤字を抱えているか」を、「日本からの輸入額」で割って出した数字を2で割っただけ――というのです。

つまり、経済理論とは無関係の、超シンプルな算数で24%が出されたというわけです。

「え、それってただの貿易赤字÷輸入額÷2ってこと…?」と思ったあなた、正解です。

実は“計算ミス”の可能性も

さらに事態は驚くべき方向へ進みます。

米通商代表部(USTR)が「理論的根拠」として難解な数式を発表しましたが、その後の検証で“計算ミス”の可能性が浮上したのです。

専門家たちは、この式に用いられていた「パススルー率(=関税がどれだけ価格に反映されるか)」が、現実とかけ離れた0.25に設定されていたことを問題視。

実際には0.945が妥当だとされ、仮に正しく設定していれば、日本に課されるべき関税は24%どころか、6%程度になる計算になるのです。

つまり、24%という数字は根拠のない、もしくは誤った前提に基づいた“虚構の数字”だった可能性があるのです。

関税は“脅し”の道具?

このような関税政策、実はトランプ氏にとって「本気で関税をかけたい」というよりは、「交渉を有利に進めるための武器」なのではないかという見方もあります。

事実、関税の発表後すぐに「90日間の適用停止」を表明し、その間に各国と個別交渉を行うとしました。日本もこの交渉の対象国であり、既に日米の経済担当者による話し合いが始まっています。

1980年代にも似たような「日米経済摩擦」が起きましたが、当時と同じように、日本は最終的に“妥協”を強いられるのではないか、との懸念が広がっています。

私たちの生活にも影響が?

この関税政策、遠い国の話ではありません。すでに日本では、トランプ関税の影響でGDPがマイナス0.5%程度落ち込むという試算が出ています。実質成長率がゼロに近づけば、企業の投資が減り、雇用にも影響が出かねません。

そのため、日本政府は一律5万円給付といった緊急経済対策を検討し始めていますが、果たしてそれで足りるのでしょうか。コロナ給付金のように「ばらまき」に終わらせることなく、きちんとした影響分析と政策判断が必要です。

最後に:問い直したい“国益”とは

トランプ氏は「自国の利益を守るためだ」と言います。確かに、国益を守ることは重要です。しかし、そのために他国に不公平な関税を課したり、計算根拠が曖昧な政策を実施することが、果たして正しい道なのでしょうか?

日本を含む各国は、いま改めて「国際協調」と「データに基づく理性のある交渉」が求められています。

「24%の関税」は、単なる数字ではありません。そこには、世界の通商ルールと信頼がかかっているのです。


メガEPA時代の貿易と関税の基礎知識 / 片山立志 【本】