「雇用統計」って、ニュースでよく耳にするけれど、実際どんなものかご存じですか?
「難しそう」「投資に関係あるの?」と思って、スルーしている方も多いかもしれません。
でも、じつはこの「雇用統計」、アメリカだけでなく、世界中の経済や金融市場に大きな影響を与える、とても重要な数字なんです。
もちろん、株式投資や為替(FX)にも大きく関係しています。
この記事では、「雇用統計ってなに?」「投資とどんな関係があるの?」といった疑問に、初心者の方にもわかりやすくお答えしていきます!
雇用統計ってなに?
「雇用統計」とは、アメリカの労働市場の状況を示す経済指標のことです。
アメリカの**労働省(労働統計局:BLS)が、原則として毎月第1金曜日(日本時間で夜10時半頃)**に前月分のデータを発表します。
この統計にはさまざまなデータが含まれますが、とくに注目されるのは次の3つです。
- 非農業部門雇用者数(NFP)
- 失業率
- 平均時給の変化
では、それぞれがどんな意味を持っているのか、順番に見ていきましょう。
非農業部門雇用者数(NFP)って?
これは、農業以外の分野(製造業や医療、建設、サービス業など)で働いている人の数を示したものです。
「どれだけ新しく雇われた人が増えたか」を知ることができるため、景気の良し悪しを判断するうえでとても重要です。
たとえば、雇用者数が前月比で15万人以上増加していれば、アメリカ経済が好調であると見なされる傾向があります。
失業率って?
これは、働く意志がある人のうち、実際に職を探しているけれど見つかっていない人の割合です。
「仕事が見つかっていない=経済が停滞している」
「仕事がたくさんある=景気が良い」
ということになるので、こちらも非常に注目されています。
ただし、仕事探しをあきらめてしまった人は「失業者」としてカウントされない点には注意が必要です。
平均時給の変化って?
これは、アメリカの労働者の平均的な時給が、前月に比べてどう変化したかを示すデータです。
給料が増えれば、人々のお財布に余裕が生まれ、消費が活発になります。
一方で、**人件費が上がることはインフレ(物価の上昇)にもつながるため、**金融政策の判断材料にもなります。

雇用統計が投資に影響する理由
では、どうして雇用統計が投資や金融市場にそんなに大きな影響を与えるのでしょうか?
それは、アメリカの中央銀行にあたる「FRB(連邦準備制度理事会)」が、雇用統計をもとに金利政策を決めているからです。
金利と株価・為替の関係
- 景気が良ければ → FRBは金利を引き上げる(インフレを抑えるため)
→ ドルの金利が上がる → ドルが買われて円安に
→ 株価は下がりやすくなる(借入コストが上がるため)
- 景気が悪ければ → FRBは金利を引き下げる(景気を刺激するため)
→ 金利が下がる → ドルが売られて円高に
→ 株価は上がりやすくなる(資金調達しやすくなる)
このように、雇用統計は金利動向の予測に直結し、金利は株価や為替相場を左右するため、投資家にとっては非常に重要な情報源となるのです。
実際にどれくらい相場が動くの?
過去には、雇用統計の発表直後に為替が1円以上動くこともありました。
事前に予想されていた数字と、実際に発表された数字が大きくズレていると、市場はサプライズとして強く反応します。
雇用統計で市場が動いた事例
たとえば、2024年8月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が14.2万人増加と発表されましたが、これは市場予想の16.4万人を下回る結果でした。
その結果、FRBが「景気の減速に対応して金利を下げるかも」という思惑が高まり、為替市場ではドル売りが進みました。
逆に翌月の9月の統計では、雇用者数が25.4万人増と大きな伸びを見せ、ドルが買われる動きが出ました。
雇用統計で振り回されないために
ここまで読むと、「毎月の雇用統計で売ったり買ったりしたほうがいいのかな?」と思うかもしれません。
でも、短期的な値動きに振り回されるよりも、中長期的なトレンドを重視することが大切です。
雇用統計は月ごとにブレがあるため、1回の数字だけで判断するのは危険です。
最低でも半年以上のデータを見て、流れをつかむことが、冷静な投資判断につながります。
雇用統計をチェックするメリット
最後に、投資家として雇用統計をチェックすることで得られるメリットをまとめておきましょう。
- アメリカ経済の健康状態を把握できる
- 金利の動向を予測しやすくなる
- 為替・株価・債券市場の流れを読むヒントになる
- 投資判断に経済的な裏付けを持たせられる
まとめ
雇用統計は、一見すると専門的で難しそうですが、実は私たちの投資にも大きな影響を持つ、非常に大切な経済指標です。
とくに注目すべきは、
- 非農業部門雇用者数(NFP)
- 失業率
- 平均時給の変化
これらのデータを毎月チェックすることで、投資のヒントをつかむことができます。
短期的な値動きに惑わされることなく、中長期的な視点で経済の流れを見る目を養っていきましょう!

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