はじめに
最後に本を読んだのはいつですか?
三宅香帆氏の『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、日本社会では、本がじっくり読めない働き方が大勢となっていることに鋭く切り込んだ書籍です。
仕事と趣味の両立が難しいと感じる人が多いのは、労働環境やライフスタイルの変化によるものです。
「仕事に追われて趣味が楽しめない」という悩みは、時間的な余裕だけでなく、精神的な余裕も関与しています。
著者が指摘するように、日本の労働文化は長時間労働や過労が問題視されることが多く、これが人々の読書や趣味の時間を奪う要因となっています。
労働の歴史を紐解くことで、かつては読書が盛んだった時代や、労働と余暇がどのように調和していたかを理解することができるかもしれません。
この本がぴったりな人
この本で想定される主な読者層
- 現代社会の課題や変化に関心のある方
- 働き方改革とワーク・ライフ・バランスを大切にしたい社会人や経営者
- 自己啓発と個人の成長に関心のある人

なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書) [ 三宅 香帆 ]
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主なポイント
三宅香帆著「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」は、読書と労働の関係を日本の近現代史から紐解く作品です。
ポイント:
- 明治時代から現代までの日本人と読書の関係を丁寧に分析
- 「半身社会」という新しい概念の提案
- インターネットなどによってすぐ得られる「情報」と、読書によって得られる「知識」の対比によって議論を展開
- 労働と読書の歴史を通じて、現代の働き方に一石を投じる

本のまとめ
全体として、働き方や読書の意義、そして社会のあり方について深く考えさせられる本だと思います。
- 働きながら読書する難しさを歴史的・社会的観点から掘り下げており、単なる「読書のコツ」本ではないようです。
- 「全身社会」から「半身社会」への移行の必要性を説いており、働き方や生活スタイルの根本的な見直しを促しています。
- 読書の意義として「ノイズを排除しない」ことの大切さを強調しています。
- 女性の読書や教養に関する歴史的な考察も含まれており、ジェンダーの視点も取り入れられています。
社会人になって、時間に余裕がなくなってしまった方、なかなか読書の習慣が身につかないなぁと思う方や、今とは違った働き方について関心のある方にとっては、ぴったりの内容の本のようですね。

より詳しく解説
「全身社会」から「半身社会」への移行:
- 「全身社会」とは、仕事に全身全霊を捧げることが美徳とされる社会を指すと考えられます。日本の高度経済成長期に確立されたこの価値観は、バブル崩壊後も根強く残っています。
- 一方、「半身社会」は、仕事以外の活動にも価値を見出し、個人の時間を大切にする社会を示唆していると考えられるのではないでしょうか。
- この移行の必要性は、少子高齢化、グローバル化、AI技術の発展など、現代社会が直面する様々な課題と密接に関連しています。
- 従来の働き方では、これらの課題に柔軟に対応できないという認識が広まりつつあり、ワーク・ライフ・バランスや副業、リカレント教育などが注目されています。
- 本書は、このような社会変革の必要性を読書という切り口から論じています。
働きながら読書する難しさの歴史的・社会的観点:
- 現代社会では、テクノロジーの発展により24時間365日つながっている状態が当たり前となり、仕事と私生活の境界線が曖昧になっています。
- 産業革命以降、労働時間は徐々に短縮されてきましたが、近年では逆に長時間労働や過労死が社会問題化しています。このような背景の中、知的活動としての読書時間の確保が困難になっていると考えられます。
読書における「ノイズを排除しない」ことの重要性:
- 現代社会では、必要な情報に、即座にアクセスできる環境があります。このような環境下では、ノイズが完全に遮断されています。つまり、情報はデータや事実として提供されるため、受け取る側の解釈や感情はそれほど影響を受けないことがあります。
- 「読書」について改めて考えると、確かに読書は偶然性や予期しない発見が伴う体験です。読書を通じて得られる知識は、単なる情報の集合ではなく、感情や人間関係に触れたり、新しい視点を得たりすることができるという点が特徴的です。
- このような「雑音」ともいえる情報を許容しながら読書することで、より豊かな解釈や思考が生まれる可能性があります。
- また、この考え方は、読書を単なる知識吸収の手段ではなく、社会と対話し、批判的思考を養う機会として捉え直すものだと言えるでしょう。
女性の読書と教養に関する歴史的考察:
- 歴史的に、女性の教育や読書は制限されてきました。
- 例えば、江戸時代の女子教育では「女大学」のような道徳書が中心で、学問の機会は限られていました。
- 明治以降、女子教育が徐々に普及しましたが、その内容は「良妻賢母」の育成を目的としたものが中心でした。
- 20世紀に入り、女性の社会進出とともに高等教育の機会が広がりましたが、それでも男女間の教育格差は長く存在しました。
- 本書では、このような歴史的背景を踏まえつつ、現代における女性の読書や教養のあり方を考察しています。

~まとめの一言~
読書という行為を単なる個人的な「趣味」や「自己啓発」の手段としてではなく、社会的・文化的な生活を送るための方法として捉え直す機会を提供しています。自身の読書習慣や知的活動を見つめ直したいという方にはぴったりの一冊です。
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